日記
「あの素晴らしい愛をもう一度」~食が育むアタッチメント~
ある日、ふとしたきっかけで、私(代表)の青春時代の名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」を思い出しました。
パソコンで検索し、懐かしい音楽をすぐに聴くことができました。
命かけてと 誓った日から
素敵な おもいで 残してきたのに
あの時 同じ花をみて 美しいと言った二人の
心と心が 今はもう通わない
あの素晴らしい愛をもう一度
あの素晴らしい愛をもう一度
・・・・
何度聞いても素敵な曲です。作詞は北山修さんです。
北山修さんは精神分析医としても有名な方で京都府立医大を卒業され京都に縁のある方です。私は直接お会いしてお話を聞いたわけではありませんが、建帛社の「食と心」という本の中で、食事療法で有名な奈良県立医科大学の石井均先生が、北山修さんの発言について以下のように紹介されていて印象に残っているので、ここに記します。
「多くの人間が、食べ物を得ることと愛情を得ることを等価と考えていると思うのです。それは、原点においてそうだからです。母親の愛情は食べ物と一緒にやってくる、ミルクと一緒にやってくるのです。
そこで生まれるものがattachment(アタッチメント)です。「愛着」と訳される場合もありますし、「絆」とか「つながり」と呼ばれる類(たぐい)のものです。これが、人間の基本的信頼感=basic trust=ベーシックトラストの基となります。・・・中略・・・。
ところが、ここで学ばなければならないのは、本当に大変なことだと思うのですが、「愛情は食べ物から来るのでは無いんだよ」と。愛情は、接触や温かさであり、安心感であり、やさしさであると言うことを再学習せねばならない。」(石井均:病を引き受けられない人々のケア「聴く力」「続ける力」「待つ力」、医学書院2015)
生れたばかりの子どもにとって、食(ミルク)は愛情と共にやってくる。「食は愛情に似ている」と言われる原点です。だからこそ小さな子どもにとって、食はアタッチメントの形成に重要な役割を果たします。
私達は、保育園や幼稚園に食を教材として持ち込み、園児が先生方と一緒に五感を使って食を味わう体験学習を提供しています。その結果、先生方へのアンケート調査によれば、約8割の先生方が子どもの意外な感性に気が付いて、子どもをよく観察し、子どもへの声かけなどをより多く行うようになったと回答しました。これは北山修さんの歌詞「同じ花を見て心を通わせた」の例のように、同じ食べものを味わって、子どもたちの感性に気が付くことで「子どもと心が通い合う」役割を少なからず果たしたからではないでしょうか。
今日、保育現場においては保育活動の基本として「アタッチメント」という言葉がよくつかわれています。私たちの活動は、この「アタッチメント」の形成にも一役買うことができそうです。それは、サペレメソッドという五感体験・共感型の食育活動が、五感を使って味わうことを通じて、味わった人同士の心と心を通わせる作用があるからです。
離乳期を過ぎると、子どもは「上手に食べさせてもらう」ことから、「自分で食べる」ように成長します。その時期にあって、子どもが安心して主体的な活動に取り組めるためには、養育者との基本的信頼感が必要です。
食を通じた子どもとのアタッチメントについては、今までは当たり前に家庭や保育現場で実践されてきたものです。しかし家庭での孤食、コロナ禍の下で先生と子どもが一緒に食事する機会も制約されている話も側聞する中、食による絆は希薄になっている気がします。食事は「栄養」だけとれたら良いのではなく、アタッチメント形成という観点を忘れないようにと感じています。
あの素晴らしい食をもう一度!